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中小企業だから関係ない? 東電株主代表訴訟からみる役員賠償責任のリスク
こんにちは。岐阜支店の高橋です。
先日、『13兆円の賠償』という、あまりにもインパクトの強い判決について、繰り返し報道されていました。東京電力の福島第一原発事故の訴訟判決、弊社内でも朝から話題になりました。
今回はこの賠償判決をきっかけに考えさせられた、D&O(会社役員賠償責任)保険の必要性に関して取り上げてみたいと思います。
東京電力福島第一原発事故をめぐり、東京電力の株主である48名が旧経営陣5人に対して損害賠償を求めた訴訟でした。これまで巨額賠償事例で記憶に残っているものと言えば、数百億円レベルの株主代表訴訟でしたが、今回はそれをはるかに上回る賠償判決になっています。その内訳は、福島第一原子力発電所の事故によって東京電力が出費を余儀なくされた廃炉や除染作業の費用、そして、被害エリアにおける住民への賠償金に充てられるそうです。
役員は時に勇断をもってリスク覚悟で打って出なければいけない場面もありますが、予想外の経済情勢・政治情勢の激変等により、当初の予想が裏目に出ることもあります。このような場合でも、役員の善管注意義務違反を理由に株主代表訴訟が提訴されることがありますが、常にこういった訴訟リスクを負っていては結果として役員の経営活動を委縮させてしまうことにつながりかねません。
そこで必要になってくるのが、今回取り上げたい保険、D&O保険(会社役員賠償責任保険=Directors and Officers Liability Insurance)です。
D&O保険は、このような役員の訴訟リスクをカバーすることで、企業の健全な経営活動をサポートするという大きな役割を担っています。役員としての業務につき、行った行為(不作為も含みます)に起因して、保険期間中に株主、投資家、従業員、その他第三者から損害賠償請求を提訴された場合において、被保険者が損害賠償金・訴訟費用を負担することによって被る損害に対して、保険金をお支払いする保険となっています。
公益社団法人商事法務研究会「旬刊商事法務」による株主代表訴訟件数の推移では、1993年の商法改正で急増した株主訴訟件数ですが、司法判断の基準が一定程度明らかになったことで2000年以降、いったんは沈静化の傾向にありました。しかし、2007年以降は企業の適切なコーポレートガバナンスを重視する社会風潮や投資家の権利意識の高まり、訴訟手数料の低額化(13,000円)による高額訴訟の多発、さらには原告株主の多様化などによって、ふたたび脚光を浴びる機会が増えていると保険会社は注意を促しています。
ニュースのような巨額賠償事例などを聞くと、一部の上場企業にしか当てはまらないので関係ないと思われた方も多いのではないかと思います。しかし、実際に様々な記事や保険会社から提供される資料を読んでみると、株主代表訴訟の70%以上は中小企業を舞台に起きていることがわかりました。
実際によくある訴訟事例としては、株主からの訴訟以外に、従業員や取引先、提携先、顧客など第三者からの訴訟事例があげられます。近年流行のパワハラ、セクハラ、モラハラなどのハラスメントや不当解雇、契約不履行などがこれにあたります。
中小企業で訴訟が多くなっている主な要因としては、
- 中小企業では、通常の取締役会や株主総会が適当に済まされていること
- 法令遵守を行うための現代的なシステム構築することが求められるものの、経営体力がないこと
- 裁判所への申立手数料が13,000円と低額であり、訴訟が提起しやすくなっていること
- 親族経営であり心理的なわだかまりや利害関係の対立によって訴訟が起きやすいこと
などが考えられます。
「改正会社法」「コーポレートガバナンス」「SDGs」など、経営者や会社役員の経営参画のあり方への期待や責任はより高まる一方で、数年先の未来ですら予測困難な時代になってきているように感じます。
経営者さまとお話をしていて常々思うことは、大きな経営判断が必要なときこそ、果敢にチャレンジしていける、そんな健全な経営活動をサポートをさせていただきたいということです。経営活動のサポート、貴社役員さまのリスクテイクの支援の一環として、ぜひお役に立てたらと思っております。
岐阜支店 高橋
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